運営論

「常識の範囲でご自由にお使い下さい。」と言われたスタジオ・ジブリ作品の場面写真を僕たちはどう使えば良いのか

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2020年9月18日、人気アニメ作品を多数抱えるスタジオジブリが、ちょっと驚く発表をしました。それは今月から、スタジオジブリ作品の場面写真の提供を開始しますという同社のニュースに出ているもので、全作品の場面写真を「常識の範囲でご自由にお使いください。」と記されているものです。

2020年9月には8作品400枚の場面写真を。その後も順次提供されています。

ニュースのページには、同社代表取締役・鈴木敏夫さんの直筆(をデジタル化したもの)のメッセージも書かれており、うんとかんたんに言ってしまえば、ジブリの場面画像が一部フリー素材化されたということになります。

さてこれは、作品の権利者から条件付きで利用を認められたと言えますが、これは心ある者ほど困るメッセージでもあります。それは「常識の範囲で」がどの範囲かわからないからです。結局は利用する人の裁量に任されつつも、使い方のひどいものに関してはきちんと訴えられる、ということになるのではないでしょうか。

僕がブログやSNSに使うならどんな基準だろうか。他の例を照らし合わせて考えてみることにしました。

※当たり前ですが2020年9月時点での僕個人の考えです。これがスタジオジブリや鈴木氏の考えに沿っているものとは限りませんし、この考えに基づいて利用してどのようなトラブルが起きても責任は一切持てません。自己判断で。

「ブラックジャックによろしく」をフリー素材化した佐藤秀峰氏の例を考える

人気漫画「ブラックジャックによろしく」の作者・佐藤秀峰氏は、同作の最初のシーズンに限って二次利用を許す英断をしました。その時のことを佐藤氏がnoteにまとめているので、そのURLをご紹介します。

「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告 前編|佐藤秀峰|note

この中で佐藤氏は利用規約を定めています。

事前の承諾を得ることなく無償で複製し公衆送信し、また、どのような翻案や二次利用(外国語版、パロディ、アニメ化、音声化、小説化、映画化、商品化など)を行うことも可能です。
二次的著作物に関して原著作物の著作権を弊社は行使しません。また、著作者人格権(同一性保持権)を行使しません。

作品の二次利用については、弊社宛(http://mangaonweb.com/inquiryTop.do)に、公開後1ヶ月以内にご報告してください。
条件に従っている限り、事後報告によって利用を拒否することはありません。

とあり、ルールさえ守りさえすれば事前承諾の必要なく、事後報告で拒否することなくコンテンツをそうとう自由に使えることを示しています。

では、守らなければならないルールとして何を示されているでしょうか。

書籍の版面の複製禁止

書籍の版面を複製・データ化したものの再配布はNGとなっています。いま、漫画on webはコミック電子書籍配信をトータルサポート|電書バトというサイトに変わっています。

電書バト内にはブラックジャックによろしくのフリーダウンロードページがあります。コミック電子書籍配信をトータルサポート|電書バト ブラックジャックによろしく フリーダウンロードページ

こちらからダウンロードして使えばよいのですね。

利用対象は「ブラックジャックによろしく」のみ

佐藤氏のコンテンツすべてが対象ではありません。「ブラックジャックによろしく」のみで「新ブラックジャックによろしく」など、ほかの作品は許諾されていません。

タイトルと著作者名の表示

【日本語版の表記】

タイトル ブラックジャックによろしく
著作者名 佐藤秀峰
サイト名 漫画 on web

【英語版(日本語以外での利用)の場合の表記】

タイトル Give My Regardsto Black Jack
著作者名 SHUHO SATO
サイト名 Manga on Web

を求められています。noteの記述を元にサイト名を記述していますが、現実的に考えるとサイト名は電書バトとすべきでしょうね。

禁止事項

違法なサイト・違法取引の利用、思想信条や政治的主張のために利用することで佐藤氏など権利者の主張であるような誤解を生じさせる利用が禁止です。

この件について、ガジェット通信が佐藤氏にインタビューした記事が出ていますのでご紹介します。

漫画家『佐藤秀峰』にきく「前例なき大ヒット漫画の二次使用フリー化に挑む理由」 | ガジェット通信 GetNews

大切なことがたくさん書いてありますので、気になる方はぜひご一読を。

例えば、上記のNG事項で二次創作の結果、佐藤氏の主張であるような誤解を受ける利用は禁止と書かれていますが、このインタビュー中にわかりやすい表現がされています。

例えば、吹き出しの中の台詞を差別的な発言に書き換えて利用するのはいいけど、『佐藤秀峰がこんな差別的なことを言っていますよ』と言いふらすのはダメ。

そうでなければ、アダルト利用すら著作権を行使しないと佐藤氏は言い切っています。

フリー素材サイト「ぱくたそ」の利用規約を確認する

フリー素材サイトとしてブロガーの利用も多い「ぱくたそ」でも利用規約があり、フリー素材の使い方についてわかりやすい解説がされています。

ご利用規約について

あくまでも「事前の取り決めの範囲内で利用するのなら追加の使用料を免除する」といった意味に過ぎず、

という表現は、よくよく噛み締めておかないといけませんね。

また、フリー素材を噛み砕いて説明したページもあります。

フリー素材とは

これらを読んでおくことで、フリー素材との距離感・付き合い方はよく分かります。

サイト運営者は決して著作権を放棄しているのではなく、ルールを守った利用であれば文句を言わない、という約束をしていること。画像の権利者や画像に写っている存在の主義主張と間違えさせるような使い方をしないこと。

その画像自体の販売などを許さないこと。

こうしたルールは割と共通しているようで、気をつけないといけなさそうですね。

フェアユースについてはまだ流動的かも

GoogleのLegalヘルプで、フェアユースについての説明がされています。

「フェアユース」とは

著作権者の権利を侵害せずに著作物を利用する方法として、日本では引用のルールが定められていますが、アメリカを始めとした海外ではフェアユースの概念が知られています。

一部を引用します。

著作権で保護されたコンテンツを批評、コメント、ニュース報道、教育、研究、調査で特定の方法により利用する場合は、フェアユースであると認められる可能性があります。

ただ、フェアユースは日本の著作権法の下にあるものでもなく、国によっても詳細がことなるものです。今回の事例でフェアユースの考え方を取り入れるとしても、どこまで参考にしてよいかを判断するのは簡単ではなさそう。

これらを踏まえてジブリの画像をどう使用するか

さて、ブラックジャックによろしく、ぱくたそ、フェアユースの例を踏まえて、僕ならジブリ作品の画像をどうブログなどで使うかを考えました。

使う画像はジブリのサイトからダウンロードして利用する

もし映像素材を持っていても、そこからキャプチャして利用、ということはしません。使いたい作品の、使いたい場面の画像があるかどうかを確認して、それをダウンロードして利用します。

画像を使うときには著作権表示をする

作品の著作権表示 - スタジオジブリ|STUDIO GHIBLIのページに、作品ごとのスタジオジブリ関連作品の著作権表示が紹介されています。画像をブログに置くなら、説明文のところに作品ごとの著作権表示を行います。

© 2008 Studio Ghibli・NDHDMT

こんな感じでしょうか。著作権者に対する敬意だと考えています。

思想を表現する利用を控える

政治・宗教・宇宙など、個人の思想を強く表現するときには使わないようにするでしょう。読者のすべてがルールを理解しているわけではないので、政治利用した、などと誤解を与えないようにするためです。

批判的な内容の記事では控える

なにかを批判するときの記事には利用しないようにするでしょう。思想のところと理由はほとんど同じです。

フリー素材サイトにアップロードしない

ルールをあまり理解していない人は「フリー素材サイトにアップロードされている画像は使い放題」という認識をしている人がいます。が、これは正しく有りません。

ジブリの画像をフリー素材サイトにアップロードしてはいけませんし、そこでアップロードされたものを勝手に使うのも、もちろんいけません。

縮小・切り抜き・文字入れなどの加工は行う

常識の範囲内、の解釈次第ですが、画像の拡大縮小・切り抜き・必要な文字入れは行って良いものと解釈します。
ただし、上記に書いたような思想の表現・批判などは入れないようにしようと思います。

気持ちよく使うことが長く使えることに繋がる

一度、利用を緩和したルールを再び締め付けるのは難しいものです。でも、僕たちがあまりにひどい使い方ばかりしてしまったら、権利者であるスタジオジブリも怒って「やっぱりだめ!」ということにもなり得ます。

スタジオジブリや鈴木氏がどこまで怒らないかを試すのが僕らのやることかといえば、それは違うと思います。

もし自分が撮影した写真・自分が描いた画像を使われたとき、どういう使われ方ならイラッとしないかを想像しながら、相手を尊重し、配慮した利用を考えたいものです。

利用する側の行儀の良さを示すことで、今後、様々な企業がフリー素材を提供してくれたら嬉しいですよね!

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