書評

【書評】権利に対する知識・心情のTIPSが豊富な「職場の著作権対応100の法則」(友利昂)

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専門書は原理原則をきっちりと定義づけて紹介してくれている反面、現実的に起こった事象に対してどの知識・法則をどう当てはめれば良いかが分からないものですよね。そういう立ち位置だから、そういうものなのですけれど、利用者サイドで考えてみると、

この場面ではどう考えたらいいの?どう判断したらいいの?

というケーススタディを知りたい職場の現場担当者が判断材料にしやすいな、と感じたのが、「職場の著作権対応100の法則」(友利昂 著)でした。

ネットの普及からトラブルも目立ち始めてきた著作権侵害、法律やガイドラインを読んでもいまいちピンとこないよ!という方は手に取っても良いと思います。

著作権にとどまらないTIPSが満載


本書はタイトルの通り、ビジネスで起こりがちな「権利」に関する100のTIPSを紹介したもの。タイトルに「著作権対応」とありますが、良い意味でこの言葉を裏切っています。とりわけ企画・広報業務と相性が良いかも。

僕の周りにいる、僕よりも権利周りに詳しくない人の中には、商標権も肖像権もすべて著作権だと思っている人もいます。けれど、そういう方々でも仕事上、結果的に権利を気にして仕事をしなければなりません。本書の何が良かったカト言えば、著作権だけに囚われず、仕事にありがちな商標や、広告業務で出てきそうなパブリシティ権・肖像権に関する項目もあることです。

例えば、画像共有サイトに人物写真があったので、コレをダウンロードして自社のWebサイトに使いたい。こういうモデル写真は権利を気にしないでどんどん使っていいの?というテーマについては、046番に

ストックフォトのモデル写真は使い放題?

というタイトルで紹介されています。およそA5サイズの書籍で、1テーマにつき2ページで紹介されているため、細かい法解釈はさておきさらっと概要や大筋を知りたい、というニーズに応えてくれるのではないかと。

100番目のTIPSタイトルは

「合法でもクレームが来るかも」と、それでも不安?

であり、担当者の心配を見透かしたかのような締めTIPSになっていました。SNSの時代は、ものごとをキチンと判断せずに、タイトルや自分が目にした一部の内容だけを根拠として言いがかりをつけてくる面倒くさい利用者の相手をしなければならない場合があります。そうした方への対処の心構えまで書いてくれているのは、まさに現代を象徴する書籍ではないかと思います。

ネット炎上対処の本ですと法律に関する理解が薄い。

法律の本だと現実的な対応に関する知識に欠ける。

それぞれの手の届かない、かゆいところに手が届いている書籍だと思います。

僕は企業の権利担当者ではないのでこの100TIPSすべてが、企業法務や製品担当にズバズバ突き刺さるものかどうかの判断はできません。しかし、目を通して「ああ、これありそう」「これは個人でも相談を受けたことがあるな」とうなずきながら読み進めました。

企業の実務担当者だけでなくフリーランスも読み応えあり

著者の友利昂氏は、法律の専門家というよりは、企業の法務担当などをしながら執筆活動をされている方のよう。実務上の経験を持ちながら表現力を持っている方の言葉は、企業で対応している方の精神安定剤として心強い存在になりそうです。「確認するクセをつけよう」といった、個別の事柄にとどまらないアドバイスが入っているのも好感触でした。

掲載されている内容については、僕のようなフリーライター・ブロガーなど情報発信を生業としている人にも参考になることが多数。買って、読んでみて損のない内容だと思いましたよ。

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