福井

猛暑になると「へしこ」が旨い!福井名産の味の秘密を学んできた

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飲食店で「へしこ」を見つけると、ついつい日本酒とセットで頼みたくなってしまいます。へしこは石川県あたりから鳥取県あたりまでの日本海側で作られる魚の糠漬けですが、サバの脂が適度に残りつつ旨みがあって芳醇、適度な塩分が酒にもご飯にも合うっていうミラクル保存食なんですよね。こうやって書くだけでも食べたくなってくるや。

そんなへしこの講座を福井県のアンテナショップ・ふくい291で聴けると聞いたら学ばないわけにはいきません。美味しいへしこの秘密を知りつつ食べ比べもできるへしこ講座に参加して、サバをはじめいろいろな食材のへしこも食べ比べてきました!

究極のへしこの夏

へしこ講座をしてくださるのは福井県立若狭高校海洋科学科教諭の小坂康之さん。福井県立大学大学院での博士論文テーマが「マサバへしこの品質形成に関するメカニズム」という、文字通り、正真正銘のへしこ博士です。

東日本大震災の際には、震災で冷蔵庫がなくなった地域のために、現地で獲れるサクラマスをへしこにするという形で支援もされたのだとか。いやあ、支援の形は様々ですねえ。

そんな小坂博士が、理論と膨大な職人さんへのインタビューを通して得たへしこの様々な秘密を語ってくれました

たんぱく質を酵素で分解したアミノ酸がうまみを増幅

へしこの主材料となるのはサバですが、サバといえば生(刺身)で食べる際に数時間寝かせると美味しくなると言いますよね。あれはサバに含まれているイノシン酸が美味しくさせているんですけれど、サバのへしこの場合にはアミノ酸の旨みがぐわっと広がってくるんですよねー。

理科の授業を思い出すかもしれませんが、アミノ酸がペプチド結合をしてできあがるたんぱく質。酵素がたんぱく質を分解してアミノ酸になっていくって訳です。

へしこを食べて血圧が下がる!?

へしこは割としょっぱい味の食べ物なので、血圧が気になる、という人もいると思います。が、へしこのエキスをラットに投与したところ、2~4時間後に血圧が下がったそうです。どうもペプチド(また理科の時間)に血圧を下げる機能があるのだとか。

まだ何かが確定したわけではないのでそういう効果の出る食品と言い切れないのでしょうけれど、僕にとっては心配材料が一つ減りました。

職人の経験値を解明する

その他、小坂さんはへしこを作るおじさんたちの感覚的な言葉を少しずつ数字に置き換える努力をしてきました。

例えばへしこを作る際にどのくらいの塩分濃度が求められ、どのくらいの期間糠漬けにするのかという話。

職人のおじさんが両手で器を作るようにして「両手ごっぽり」という塩の量は、様々な調査の結果塩分濃度20%程度であることを突き止めたり、サバを開くときに腹開きではなく背開きにする理由は身の崩れを防ぐためだったり、糠漬けが7ヶ月以上必要な理由として、7ヶ月の間に変化する水分・塩分・有機酸量・良くない菌やカビの量が理想的だったことなどをつきとめました。

口伝を科学に落とし込むの、カッコイイです。

夏を越す

その7ヶ月の間に一夏を越す、ということも大切なようです。へしこを作る間に温度を10度、20度、30度でそれぞれ固定してみたところ、温度が高いほど身が飴色になり、香りも出て、うまみも増したのだそうです。

40度を記録した今年の夏のへしこはどのようになっているんでしょうかね。食べてみたいものです。

おいしいへしこの選び方

そんなへしこの特徴を講義してくださった小坂さんが伝える「おいしいへしこの選び方」は、基本的に飴色・褐色の美しいものを探すことだそうです。写真の上と下では色が全然違いますよね。下の方がいいです。

ただし、へしこの製造過程で醤油を使う業者さんもあるので、その点は要注意。

後の試食で醤油を使ったへしこと、昔ながらの塩と糠だけで作られたへしこを食べ比べましたが、塩と糠だけのへしこの方が美味しかった印象は確かにありました。

へしこを食べ比べる

小坂さんの講義も終わり、いよいよへしこの食べ比べです。いやあ、これが楽しみだったんですよね。結果的には講義があってこそ生きるいろいろなものがあったわけですけれど。以下、感想はすべて僕個人の感想です。

さて、出てきたへしこたちはこれです。

表で示すとこんな感じ。

1)国産・サバのへしこ(生)
醤油や焼酎などを使って味を作ったもの
2)国産・サバのへしこ(焼)
醤油や焼酎などを使って味を作ったもの
7)海外・イワシのへしこ(焼)
イワシ・糠・塩・唐辛子のみ使用
8)ふぐのへしこ(生)
醤油や醸造アルコールなどを使って味を作ったもの
3)国産・サバのへしこ(生)
サバと糠と塩だけで作ったもの
4)国産・サバのへしこ(焼)
サバと糠と塩だけで作ったもの
9)国産・シイラのへしこ(生)
シイラ・糠・塩・酒粕・唐辛子のみ使用
10)国産・イカ(生)
スルメイカ・塩・唐辛子のみ使用
5)海外・サバのへしこ(生)
醤油や焼酎などを使って味を作ったもの
6)海外・サバのへしこ(焼)
醤油や焼酎などを使って味を作ったもの
11)国産・サバのへしこ(生)
サバ・米麹・米・酢で作ったもの
12)国産・イカ(生)
オリーブオイルやニンニクを使ったものをプチトマトで

大根、水、お米、日本酒といったへしこに対する口休め的な素材もご用意いただき、様々なへしこを食べ比べました。全体的に左側、1~6のへしこがサバの王道的なへしこでここの食べ比べが主眼となりますね。右サイドのへしこは「こんなのもありますよ!」という感じじゃないかと思います。

生と焼きの違い

まずは1と2、3と4といった、同じへしこで生と焼の違いについて。
やっぱり歯触りが最も異なってきます。生のしっとりとして、くにゅっと感のある歯触りと、焼きのぱさっとした感じの歯触りの違いですね。

僕は生のへしこの方が好みに合いました。

醤油を使ったものと使っていないもの

生でも醤油を使った1と塩だけの3、焼きで醤油を使った2と塩だけの4を食べ比べて見ました。

醤油の入っている1・2は3・4と食べ比べると醤油が入っていることがよく分かります。だがしかし、1・2単品で食べた場合に醤油が入ってるかを見抜けるかといえば、これは修練が必要だなあという印象を持ちました。

個人的には1・2よりも3・4の方がサバらしさ、うまみ、塩のバランスが良いと感じられました。目隠しして食べたら3・4の方が美味しいと思ったでしょうけれど、なかなか繊細な差だと思います。また、醤油の味の好きな人が1・2を美味しいと思っても、それは不思議はありません。

国産か海外ものか

醤油を使ったへしこの中で、詳細な原材料は違いますが、国産のサバと海外のサバを使ったものを比べました。
生で国産の1と海外の5。焼きで国産の2と海外の6、といった具合です。

これは国産のサバの旨み・脂の乗りが全然違うなあと思いましたね。7ヶ月も糠漬けにしているのにこれだけ脂の乗りが違うのがわかるなんて!こりゃ、福井を訪れてほんもののへしこをつまみながら地酒を飲みたくなりましたよ。良い意味で危険な香りがします。翌日の午前中は二日酔いで潰れてもいいくらいの勢いでお酒対策をしておかないと。

ただ、1~6のいずれのへしこも、これまで普通に食べていたへしこよりうんと美味しかったことは付け加えておきます。いやあ旨かった。

その他のへしこもバラエティに富んでおもしろい

特に良かったのは10のイカでしたね。ものすごい高級なよっちゃんイカみたい!というとへしこ業者さんに失礼なのかもしれませんが、クニュクニュとした歯触りとしみこんだ旨みが良いじゃなイカ。

7のイワシは、噛み進めるにつれてイワシの味がじわじわとせり上がってきます。サバの旨みではないのですが、魚の味わいを楽しめるへしこでした。

9のシイラも、独特の臭みがありながらもへしこらしさをキープした一品です。これもなかなかどうして。

8のフグは、意外や意外、そんなに印象に残る味ではありませんでした。淡泊なんですかねえ。フグと聞くとありがたいんですが、へしこにしなくてもいいかな。ほかの調理法でいいかな、と思っちゃいました。

福井のスローフード・おいしいへしこを食べて酒を飲みたい!

科学を知って試食することでへしこのおいしさを多元的に知れるイベントでした。好奇心もくすぐられて楽しいイベントだったなあ。

実は併せて日本酒の試飲があり、開発中の日本酒を口にする機会もありました。それぞれのお酒の単品と、へしこと合わせて飲んだ場合ではお酒の味ががらっと変わったんですね。

そのことを考えると、福井に行って、東京じゃ飲めない福井の地酒をちびちびとなめながら、福井のへしこをつまむってことをしたいなあと思えるようになりました。

美味しいへしこ、また食べたい!

小坂さんにあえて東京で美味しいへしこが食べられるのはどこですか?と聞きましたら、渋谷の「うらら」さんをご紹介いただけました。福井に行く前にこちらで予習してみようかな。

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