書評

明治時代×ビジネス×女性進出の漫画 日高ショーコ著「日に流れて橋に行く」が面白い

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Kindleの画面を見ていて、初めて表紙絵から作品を購入しました。日高ショーコさん著作のマンガ「日に流れて橋に行く」です。上手いなと思わせる絵、内容の想像がつかないタイトル。詳細を見てみたら明治時代後期の架空の呉服屋を舞台とした話で、これは面白そうと手に取って(Kindleで1巻を買ってみて)読んだら面白いのなんの。

明治時代のビジネス、女性の社会進出、落ちたかつての名門店の再興と取り上げるテーマが最高で絵も非常にキレイです。ぜひ読んでみることをおススメします!

経営が落ち込む老舗呉服屋「三つ星」の再興物語「日に流れて橋に行く」

部隊は明治40年代の東京。江戸時代から続く高級呉服店「三つ星」は、かつては大賑わいだったものの、現在は「昔の名前で売っています」状態。

その主人の弟・星乃虎三郎がイギリス留学から帰国したところから物語がスタートします。

主人や三つ星のスタッフとの複雑な関係、三つ星再建で活躍する、現代的な感覚を持つ男・鷹頭と三つ星初の女性従業員・時子の一挙手一投足に目が離せないマンガです。

綺麗な絵でキャラクターが生き生きと躍動する「日に流れて橋に行く」

読んでみてまず思ったのは絵が上手だなあということ。マンガはどんなにキャラクターが魅力的でも画力がないとその魅力を活かしきれないものですが、活かしきれるだけの筆力があるなあと。

僕は時代考証家でもなく専門のことはわかりませんが、明治時代の東京が好きだという作者の日高さんがよく学ばれているようで、当時の東京の雰囲気、回想シーンで出てくる同時期のロンドンのシーン、みんな素敵です。

そんな舞台で躍動する主人公の虎三郎は元気な青年。少年漫画の主人公的な、ポジティブ志向と仲間を信じる心意気で立て直しを図ります。

三年間のロンドン留学で得た新しい感覚を、決して押し付けることなく上手に取り込ませていく魅力が大いに前面に出ています。

主人公をビジネス面でサポートする鷹頭は冷徹風で謎を持つキャラ設定が人気を呼びそう。虎三郎とは確たる絆があるようですが、隠された過去を明かす機会がまだ訪れておらず、鷹頭の行動は予想がつきません。

時子は傘屋の娘でファッションオタクだったのを、身長や顔の小ささを鷹頭に見初められて店員にスカウトされました。

日に流れて橋に行く2巻扉絵より。(C)日高ショーコ

↑このカットを見ても、虎三郎と同じくらいの背丈で、高身長と言われている鷹頭にもそう引けをとらない背の高さになっています。

スカウトとはいえ面接のテストの機会を得ただけですが、そこで抜群の気づき力と自分の考えを述べる力を見せて、2名の合格者に入ります。
これから三つ星を変えていく重要なキャストとなるでしょう。

「日に流れて橋に行く」は女性進出・ビジネス要素のある展開もおもしろい

明治時代、女性が仕事の世界に進出したのは、0が1になった時代でした。男女雇用機会均等法ができたあたりからのこの数十年の動きは不足している均等化を是正しようという動きでしたが、そのすべての根っこは明治時代にあったわけです。

採用されてからの時子の動きは、明治時代の女性の扱われ方や奮闘の仕方がうまく描かれています。

また、現代のデパートでもある当時の呉服屋の再建として、メディアミックスを仕掛けるようなビジネス要素も含まれています。時代の最先端の知識と切れる頭脳を持つ虎三郎と鷹頭のコンビの立て直し、ライバル呉服店の動きなどはこれからも目を離せません。

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##セリフ回しは現代語を使っており読みやすい

キャラクターのセリフ回しには現代語が入っているので、読んでいて読みにくいということはまったくありません。

戦国時代や江戸時代のマンガですと、そのほかが普通なのに語尾だけ「ござる」になっているようなものもあったりしますが、そういったところは省かれています。

その分わかりやすく読み進めやすい作品であると言えそうです。

BL出身の漫画家さんはマンガが上手いのかも

BLはまったく見たことがないのですが、僕が好きになった女性の作家さんにはBL出身の人が何人かいます。

「昭和元禄落語心中」「舟を編む」の雲田はる子さん、「お江戸離婚ものがたり ふつつかものでした」の川嶋すずさん、そして今作の日高ショーコさん。

皆さん絵がきれいでストーリーの展開がうまく、キャラクターの活かし方を心得ている、という共通点があって、ほかの作品どんなんだろうと思ってWebを調べていると

「おおお、この人もBL出身なのか!」

と驚いている次第。

ジャンル的にBLに手を出す勇気はないのですが、一般紙に載るような作品を書いたらどんどん世間に名前が出る作家さんは多いのだろうなあという気がします。

▼川嶋すずさん「お江戸離婚ものがたり ふつつかものでした」は書評を書いています。ご覧ください!
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あっというまに3巻まで読み切ってしまった「日に流れて橋に行く」

読み始めたら全然止まらないんです。ストーリーの展開も良くてキャラクターも立っていて、気が付いたらKindleアプリで次の巻を購入していました。まだ3巻までという現状が「もっと読みたい!」という欲をかきたて、今連載中の集英社「クッキー」に手を出してしまいそうで怖い。

はやく続きが読みたい!そう思わせる明治浪漫作品。性別年代関係なく楽しめる良作ですよ!

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