酒・飯

馴染みとコロナとコミュニケーション

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新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言も明け、夜の飲食店の営業も緩和されるようになってから、行きつけの立ち飲み屋さんに行ってきた。ちょいと久しぶりだ。

いつもぎゅうぎゅうにお客さんが入っていて、入店せずに帰宅したことも何度もあったその店が、カウンターは半分埋まるくらい、テーブル席はまばらという客入り。空いていることは嬉しいが、空いていることが哀しい。ちょっと複雑な心持ちで入店。アルコールジェルを掌に乗せられ、一人で恋人同士の手繋ぎをするように両手と指の間までジェルを浸透させた。

コロナ前より独占しやすくなった店主


人数が少ないから、店主との会話がとてもしやすい。混んでいるときはつねに料理やお酒の提供に追われていて、アシスタントの方もいつも忙しそうにしているお店で、店主とのトークが楽しめるなんて、この時期ならではの贅沢なのかもしれない。

僕と同い年なのに、じゃがいもみたいな僕の見た目とは対極的な、ちょっと悪そうな、色気のある店主。良い意味で客あしらいが上手で、一見さんには求めているだけのきっちりとしたお酒や料理の説明をし、忙しい中でも優先的に対応をする。僕らのような扱い方を熟知した常連に対しては、珍しい肴などいつもと違うことやオススメの銘柄をちゃっと紹介し、あとは常連の行動に委ねている。常連は常連でその日の自分の居場所をきちんと見つけ、その日なりの楽しみ方をしている。隙をみつけて店主に声をかけることがあっても、営業の邪魔をすることがない。デキた客たちだ。

そんな忙しさが、緊急事態宣言が解除され、建造物が赤くなる以外の効果がいまいち分からなかった東京アラートの状況下では失われていた。店主とはいくらでも会話できそうで、いつもはワイワイしている店内でも、他のお客さん同士の会話に聞き耳を立てられそうなくらいの静寂さがあったんだ。

基本的なオペレーションは全然変わっていないが、何人もいたスタッフの人は減り、お酒や料理の発注も勘働きの調整の真っ最中のようだった。いつもよりお酒の品数が少なかった気もするし、料理も一部は終了してしまっていた。

でもいいんだ。そのお店に行けて、店主やほかの常連と話せることが楽しい。お酒も美味しい銘柄はたくさんあるし、残った食材を僕のために美味しく誂えてくれた喜びがある。まずはこのご時世、お店が引き続き営業し続けていること。この喜びを最大限に受け入れるのが僕ら呑兵衛のすることなんだろうなと思った。

新型コロナウィルスが今の風邪やインフルエンザくらいの地位にまで降りてこないと、昔の、雑踏のような、密のような店内は回復しないのかもしれない。まあ、それがどうなるかを一介の呑兵衛が予想しても詮方ないわけで、その時の状況に応じて呑みに行くしかないわけだけれど。

オンライン飲みのコミュニケーション濃度

密な店内でなくなるとすれば、リアルな店内はいままでよりもVIPな場所になり、席にあぶれた常連同士によるコミュニティのオンライン呑み会が発生してくるのかもしれない。呑みにくる理由って、お酒に酔うだけではなく、ちょっと知っているけれどしがらみのないあの人たちと他愛もない会話をしたい、というのもあるからね。どんなウィルスが発生しようが、人が人に寄りかかりたい気持ちとか責任感なく励まし合う場であるとか、そういうものを奪い取ることはできないんだよ。

オンライン飲み会、何度もやった。必要以上にカメラを向いてしまう相手の目線を勝手に感じながら飲む。同じ酒量でも酔いが早い。コミュニケーションは何か一定の範囲の濃度があるように感じ、それより濃くするのも、それより薄くするのも難しい。

行きつけで呑む一人酒はどうだ。密は避けながらも、肩を叩こうと思えば叩ける、握手をしようと思えばできる。そんな空間に誰かがいる。それが不要な時はコミュニケーションを取らずチビチビと呑めばいいし、人恋しくなったらお酒の一杯でもご馳走して会話を進めてもいい。コミュニケーションが自由だ。僕は猫みたいに、もしくは野良犬みたいに自分勝手にしていたいタイプ。だからこそ一人で呑みに行き、偶然そこにいた人と自分の好きな濃度でコミュニケーションが取れるのが楽しいのだと再認識した。

好きなスタイルを再認識する

新型コロナウィルスでは様々な領域で変化を余儀なくされた。だからこそ見えてきたこれまでの当たり前や意識していなかったけれども大切にしていたものを、誰もが少しずつ認識したのではないだろうか。

僕にとっては飲食店におけるコミュニケーションがそれだった。自分の好きなスタイルが再認識できたような気がする。勝手な自分の満足できるスタイル、それは自分の意思で濃度を決められるコミュニケーションにあるのだなあと感じさせられた。

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