書評

【書評】出版後35年の今も啓発書を凌駕する人生のバイブル。池波正太郎「男の作法」

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時代劇大好きな@odaiji さん曰く、。

没後25年ながら時代小説・時代劇好きなら今も知らない人はいないのではないかというくらいの小説家・池波正太郎さん。
彼が生前、若い友人や編集者に向けて池波さんの生きてきた時代の人間のあり方を語った「男の作法」という本があります。こちら、いま読んでも時代背景の違いさえ吸収してしまえば示唆に富んだ内容ばかりで人間形成に役に立つこと間違いなし!と感じました。全年齢対象です。

本に書いた通りのことをやる自己啓発書なんかよりは、こういう本を読んで考えながら生きていった方がもっともっと役に立ちますよね。

35年前の本ですが、いまこそご紹介します。

人間は矛盾した存在

池波小説の大きなテーマの一つが「人は良いことをしながら悪いことをし、悪いことをしながら良いことをする」という、人間は矛盾した存在であるという感覚です。例えば「鬼平犯科帳」の主人公・長谷川平蔵は、若いころは札付きのワルでした。

そして火付盗賊改方の長官になってからも、重要な情報源としてもと盗賊と連携を取ります。元盗賊はいったん平蔵に捕らえられますが、見込みのありそうな者は平蔵自らが口説いて配下に組み込む。

その後、その盗賊も盗賊時代の仲間をお上に売る「裏切り」と正義のはざまで悩んだりしています。

また、盗賊の中でも普段は恵まれない人に施しをする者も出てきたりしていますね。

仕掛人・藤枝梅安の主人公、藤枝梅安は普段は針医者です。貧乏人からはお金をとらずに全身全霊、治療に打ち込みますが、その裏の家業として、この世に生かしておいてはいけない悪党を、普段は人を治すための道具である針を使ってお金をもらって殺すという殺し屋もやっているわけです。

そんな自分の矛盾を仲間の仕掛人と語り合っているシーンがしばしば出てきます。

これらは、長谷川平蔵や藤枝梅安の口を借りて、池波さんが語っているんだなあと思わされるわけです。

理屈だけですべてを決めない

そんな矛盾している存在が作っている社会だからこそ、人間社会はそれに適応したやり方で進化していかなければならない、と池波さんは本書で語っています。

プロ野球のヤクルトと西武で監督をした広岡達郎さんのキャッチコピーであった「管理野球」について池波さんが語るんです。

ただ理屈でもって全部割り切ってしまおうとすれば、もともと矛盾の存在である人間がつくっている社会の苦痛とか、苦悩とか、苦悶とか、傷痕とかというのはひろがるばかりなんだよ

必ずしも白と黒に割り切れるものではない。その中間の色というものもあるということですよ。そのことにもうちょっと気が付くとよかったと思うね、広岡に対しては。

広岡さんに対するコメントとしては過去の話ですが、この「割り切れるものではない」「中間の色」という要素に、当時の管理社会でも、今のネット社会でも気づいていない人が多いですよね。

何かあるとすぐ論破したがる。何かの良さを伝えたいがために別のものを「ダメ」「バカ」「オワコン」と言い切る。自分の考えと違う人のやることを「バカなこと」と評する。

世の中そんな簡単じゃないわけです。それぞれの人の立ち位置に応じて考え方も優先順位も矛盾の仕方も異なるんです。そういうことが想像できないか、または単にキャッチーであるがために二項対立っぽく話を持っていく。そうやって自分を浅くみせちゃうのはもったいない話ですよ。本当なら二項どころか何十項もあるかもしれないのに。

「引き寄せ理論」なんて35年前から語られている

自己啓発書や啓発系セミナーによく出てくる「引き寄せ理論」ってご存知ですか?何か実現したいことは黙っていないで言葉として発したり紙に書いておいたりすると実現する、という話です。こういう話を「うさんくさい」と思う人もいますよね。

でも、すでに35年前、池波さんは引き寄せ理論について語っています。「引き寄せ理論」という言葉は使っておらず「求心力」と語っていますけれど。

ぼくの場合、何かこうしたいと思ったら絶えずそのことを思っていれば、何かにつけてそのことを目指して、無意識のうちに少しずつ段取りを進めていくからね、だから自然にそうなるということになるんだよ。

とおっしゃってるんです。具体例として、南フランスへ行きたいと思ったのなら、地図とか観光案内とかそれに関連した本を読んだりして「今度、南フランスへいこう、行こう」とことあるごとにやっていると自然と行けるようになっている、とおっしゃるんですね。

これ、まさに引き寄せ理論じゃないですか。

柔軟

昔の男は頑固だという何んとない印象ってありますが、池波さんの考えを聞いていると、頑固な部分と柔軟な部分が実にはっきりとしています。それって今の世も一緒。柔軟なだけだと骨のない人間になっちゃうけれど、頑固なだけだと融通が利かなくなっちゃう。

東京のそばつゆが辛い、という話がきっかけになって池波さんは次のように語っているんです。

東京のそばのおつゆはわざと辛くしてあるわけだ。先へつけて口の中でまざりあってちょうどいいように辛くしてある。

好きなように食べればいいんだけれども、結局、うまく食べるためにそういうふうになっている

東京のそばつゆが辛いのは理由があってそうなっていて、ちょっとしかつけないのは通ぶってやってるんじゃない、たくさんつけたら辛いからちょっとだけつけるんだ、という話なんですね。で、本来は好きなようにしていいんだけれど、おいしく食べるためにはちょっとだけつけた方がいいんだから自然にそうなっているというんです。

形から入ることありますよね。これが運悪く形から入った人に蕎麦の食べ方を教わると、辛くないつゆでも、さきっちょだけつけて食べることになって、結局おいしくなくなっちゃうんですよね。

理由とか根本をしっておいて、あとは柔軟に対応すればいいよ。

池波さんは蕎麦の食べ方ひとつで僕たちにそう指南してくれています。

柔軟という点ではもう一つ。池波さんは本書で、自分の考えを若い人に押し付けていません。

「僕の時代はこうだったからこうしていた」

という話をしているのですが、それをこれからの人はこれからなりにアレンジすればよいという風に考えていらしたようです。当時の「昭和のおやじ」でそんな柔軟な考え方を持っていた人ってそういなかったんじゃないかなあ。

手紙を書く

今でも一筆箋はとてもしゃれたものだと思います。敷居の高さも感じますけどね。僕は悪筆だし。

35年前の若い編集者さんも池波さんに「手紙を送るのは難しい」と語っています。

池波さんの答えは簡単です。

手紙を書くのは話しているように書けばいいんだ。その人と話しているつもりになって。

手紙は大事だね。書きかたは、結局、気持ちを率直に出すことですよ。あくまでも相手に対面しているというつもりでね。

文法とかテンプレの問題じゃないんですね。話すつもりで、率直に、気持ちを出す。

あれだけ平易で読みやすい文章を極めた人ですが、そういわれてしまうと下手な技術よりも素直な気持ちをしっかりぶつけることが大切だということが分かりますよね。そしてそれができていれば結果的に手紙は書けるんだ、ということなんだと思います。

これはきっと、手紙じゃなくってブログを書くことも同じなんだと思います。

タスク管理

スマホや表計算ソフトの時代じゃないので分単位・秒単位のタスク管理ということではなりませんが、根本の大切なことを池波さんが語っておられます。

少なくとも三カ月先を見越したうえで現在の時間をつかって行く。
「すべて前もって前もって・・・」
と、事を進めて行くことが時間のつかいかたの根本なんだよ。

クセになれば少しも気ぜわしくない

余裕を持って生きるということは、時間の余裕を絶えずつくっておくということに他ならない。

池波さんのタスク管理の根本と「クセになれば」というところの習慣化の大切さも語っていますね。

読んで学べることが多すぎる書籍の最後の教え

ほかにも死生観や習慣化の話、上手な金の使い方の話、感謝は言葉じゃなくてかたちに出さなければいけない話、マルチタスクな話・・・。

今の啓発書に出てきそうな話題がいろいろ池波さんの言葉で語られています。

今、読み手が意識をしながら読むことで、池波さんの時代から大切な基本原則が何も変わっていないことを、僕らは知ることができますよ。

もちろん池波さんの持ち味の一つであるグルメに関しても役にたつ知識・知恵がたくさん出てきます。先ほどのお蕎麦の話もそう。ホテルのバーに行く話もそう。

そんな本書のほとんど最後に出てくる池波さんの指摘が

現代の若い人たちを見ていて感じることは
「プロセスを大切にしない・・・」

ということでした。プロセスによって自分を鍛える、プロセスによって得ることによって道を見つけることができるとおっしゃっています。

それがどうして大切なのか、つまらないと思えるサラリーマン仕事を池波さんはどう楽しく変えていったのか。

池波さんはその昔、お役所で税金の徴収係をしていたそうです。そういうお仕事でさえ彼は「楽しむ」ことができていたといいます。

そうやってプロセスを楽しむ工夫が人としての器を大きくしていくんだなあと。僕今45歳ですけれど、それでもまだ勉強になるし池波さんに届かないですよ。

世の中すべてが「みがき砂」

そんな池波さんは世の中のいろいろなものが男を磨くためのみがき砂だとおっしゃいます。

長谷川平蔵の器の大きさ、藤枝梅安の人殺しと人助けの両立、秋山小兵衛(小説・剣客商売の主人公)の柔軟で水のような人間性。すべて池波さんの磨かれた男の作法から出てきているんだなあと改めて感じさせられました。

池波さんが伝えたいことをストレートに表現されているのがこの「男の作法」です。

しかし、その伝えたいことをどういう場面で使っているかという実践例は、この「男の作法」を読んだ後に「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」「剣客商売」を読んでいくとさらに伝わってくるでしょう。

ぜひご一読いただきたいものです。

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